政治を変える「透明な市役所」

2013.7.28 | TEXT

ガラス張りの市役所と「まちどま」。政治を外部に聞こうというメッセージが空間化されているような気がした。

ガラス張りの市役所と「まちどま」。政治を外部に聞こうというメッセージが空間化されているような気がした。

 新潟県長岡市に仕事で訪れた。会議の場所は市民ホールだったが、新幹線を降りると 駅から直結。アリーナ、市役所、議事堂も集約されている。最も驚いたのが、そのすべてがガラス張りで、中がまる見えなのだ。設計は限研吾、新しい行政機能のあり方を示しているように思う。

 これらバラバラの機能は、「まちどま」という半屋外のオープンスペースを中心に構成されている。「まちどま」は土問空間で、キッチンカーが来てカフェになったり、パブリックビューイングで盛り上がったり、普段は市民の抜け道になったり、様々な顔を持つ。時間帯や季節、使う側の意図によって機能が切り替わる自由なパブリックスペースだ。

 市役所は「まちどま」の上空を取り囲む立体パズルのように構成されている。職貝は会議室に行くのに、パブリックなブリッジを横切らなくてはならないこともある。会議室も四方がガラス張りで、内容は聞こえてこないが、誰が何人ぐらいで話しているのか、その気配は否応なしににじみ出る。市役所のなかにパブリック空間が入り込み、その境界は暖昧だ。

 極めつけがガラス張りの議事堂だ。提案した建築家もすごいが、採用した議会もすごい。議会の様子が通りすがりの市民にさらされ、「透明な議論」が日常勤線に存在する。

 街と絡み合うように存在する市役所は機能も経済も、街ににじみ出る。市民は自然に行政や政治を近い存在に感じるだろう。物理的な距離を縮めることは、そのまま精神的な距離も縮めることになる。その効果は時聞をかけてじわじわと効いてくるのではないだろうか。空間が行政のあり方を変えるかもしれない。長岡市役所はその大きな一歩を踏み出した。

 

*こちらの記事は季刊誌『オルタナ33号(2013年6月29日発売)」に「政治を変える『透明な市役所』」というタイトルで掲載された記事です。

オルタナ

(文=馬場正尊)