ハコダテ・スミカプロジェクト

2003.11.5 | TEXT

 

函館の風景。美しい港町。

函館の風景。美しい港町。

変化の中に身を置くこと。

建築にしろ編集にしろ、僕はそのために仕事をしているんじゃないかと思う。変わっていく、変わり始める時の空気がたまらなく好きなのだ。それに惹かれるように、いろんな街へと移動する。

函館に行って来た。この街にも、そんな空気があった。『情報デザイン入門』を著した渡辺保史さんに呼んでもらった企画に参加するために。

函館は美しい港町だ。開港以来150年近くの歴史と文化が色濃く残り、歴史的建造物や港町独特の旅情をたたえている。多くの小説や映画の舞台にもなっている。しかし、日本中のあらゆる地方都市同様、人口の減少、高齢化の進展、空き家や空き地の増大、産業の衰退、など、数多くの課題が山積しているのも確かだ。

ワークショップの風景。まさに世代も職業も越えた参加者だった。

ワークショップの風景。まさに世代も職業も越えた参加者だった。

「ハコダテ・スミカプロジェクト」と呼ばれるそのイベントは、函館の都市再生の具体的なアイディアを市民がワークショップ形式で出し合い、それを実際に行政に対して提案していこうという試みだ。そもそも主催しているのが函館市であり、地方行政は新しい手法を模索していることが伝わってくる。僕は現地で若く積極的で、粘り強い行政マンの姿と出会った。市民と行政の距離が近いという意味で、そこに東京とは違った種類の可能性を感じることができる。巨大な東京ではとりあえず僕らのような民間(というか物好き)が暴走? して、後から行政を巻き込んでいくという方法しか考えられないけど、函館では併走しようとしているように見えた。

呼んでくれた渡辺さんは、昨年「ハコダテ・スローマップ」という新しい視点の地図を(たぶん勝手に)つくっていて、そういった活動がジワリと場所に浸透していっているのだ。そういった活動は人材を集めるもので、地元で活躍するいろんな才能が集まって運営委員会がつくられていて、そのプロセス、苦労話を酒の肴に聞くのは楽しかった。それはやっぱり、東京のR-projectや、昨年、東京の東側でやったTDB-CE(東京デザイナーズブロック・セントラルイースト)と似ているような気がして、共感できた。

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ワークショップの内容を書き出すと長くなるのでそれは関連サイトに任せるが、とにかく驚いたのが小学生から60歳までが参加して一緒に未来の具体的な都市計画を考えるという風景と、そこで出てきた提案のリアリティである。

 

*こちらの記事はWEBマガジン「REAL TOKYO」に「ハコダテ・スミカプロジェクト」というタイトルで掲載された記事です。

(文=馬場正尊)