RECRUIT

仲小路ビル


時期:2010.03
所在地:秋田県秋田市
クライアント:個人
規模:SRC造地下1階地上4階建
建築面積:239.46㎡
延床面積:945.81㎡
用途:オフィス,店舗,飲食店,住宅


秋田駅から徒歩5分にある、築40年ビルのリノベーションプロジェクト。

秋田駅前にある築40年のこの建物は、雑貨屋、飲食店、ビリヤード場など、時代とともにいろんな世代が遊び場とした、地元の人々にとって思い出深いビルだ。このビルを、シェアオフィス、飲食店やサロン、そして住戸の複合ビルにリノベーションした。

築40年という古いビルをリノベーションするには、まず建物としてのレベルを基準値に戻してあげることが必要だ。例えばアスベストの除去工事や、防水工事、電気や空調などの設備もすべてやり替えるなど、目に見えない「建物の体力」のような部分をを標準に戻すことがかなり大きな工事となってくる。

仲小路ビルはもともと全てテナントだっため、一部オフィス、駐車場、住戸に用途変更をした。テナント、オフィス、住戸といった複合ビルでは、それぞれの動線を考慮する必要がある。もともとトイレがあった場所を住戸専用の階段室とエレベーターを新設し、住戸の動線をきっちりと分けた。住戸のプランとしては、天井スラブの1区画を大胆に抜いてバルコニーとすることで、家の中心に明るく大きな庭をつくった。これによって、2フロアの住戸をメゾネットとすることができ、また庭をぐるりと囲むようなプランで北側にも光が届く明るい抜けのある住戸となった。また、既存のサッシの内側に更にサッシをプラスして、二重サッシにした。サッシを新しく入れ替えるよりも安価で簡単に遮音と断熱性といった機能性をアップさせることができる。

ファサードは、イメージは一新しながらも人々の場の記憶をとどめられるよう、昔のままに真っ白に塗り上げた。歴史を物語る部分を残し、新しくした部分とのコントラストを楽しむ。

かつては賑わった秋田の駅前も、他の地方都市同様に中心市街地の空洞化が問題となっている。私たちにとっては魅力的にうつる古い建物たちがそのまま放置されているのが現状だ。東京では一般的になってきたリノベーションが地方ではまだまだ浸透していないのだ。仲小路ビルが、地方都市の中心市街地活性化へのひとつのきっかけになってほしい。

写真:(c)佐藤貴士